桜のやうな人なりけりと卒業式結婚式でも語らるる君
霧島茉莉/短歌連作「オペ着でふたり」より(「いであむ」創刊号)
2月にこの歌に出会ってからずっと考えていた。
桜のような人とはどんな人だろう。
自分の知る範囲でそういう人がいるか記憶をたどってみたけれど思い当たらない。あ、いや一人だけいた。容貌と佇まいが桜の花のように美しかった。でも彼女はすごい怒りんぼだったからなー…
桜に例えうる人は稀有なのだと、考えることを諦めたかけた頃、例年よりかなり早い桜が咲き始めた。存外長く咲き続けた花を私はたっぷり味わった。今は散り始めた花と樹に残る紅い蕊を楽しんでいる。もう若葉の色も見えてきて、花だけの頃より一層華やかだ。
これから葉を茂らせた桜は長く続く猛暑の日差しから私を守ってくれるだろう。秋には綺麗に色づいた葉を落とし、私はそれを子どものように拾う。葉が落ちた後には帰り花を咲かせることもあるだろう。そしてその後冬芽を抱いて静かに次の春を待つのだ。
桜はいいなあ。
桜のような、と大切に語られる君はなんて幸せな人なんだろう。
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君にあふたびに心は開かれてともに学びし日々のかがやき
集ふたびに友らの顔を少しずつ美しくせり君は今でも
黙(もだ)深く十年は消ゆ いま君にうたへば祈りとなる帰り花
かげみえぬ君が心と見てしより愛さるるままのカラメルプリン
(同「オペ着でふたり」より)
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下手な言葉で説明しようとすると大切なことが逃げてしまうから、何やらふわふわ考えながら、歌の中の物語をただ繰り返し読むことにしようと思う。
うん、プリンも好きだぞ。